資料館収蔵の楽譜~イタリア
定期刊行誌
Il Mandolino
Torino (1892~1937)
Giuseppe Monticone を主幹とした世界初のマンドリン専門誌で、創刊後1893年には早くも第1回の作曲コンクールを主催した。第3回のコンクールまでの応募規定はセレナータなどの小舞曲のための作品でFerdinando Francia,Giacomo Sartori,Calogero Adolfo Bracco等の作品が入賞している。1898年の第4回作曲コンクールの応募規定は“4楽章から成るシンフォニア”で、恐らく最初のマンドリン4部編成による序曲作品であるDomenico De Giovanni,Roberto Diensのシンフォニアが入賞した。第5回作曲コンクールではAngelo LiprandiのOuverture(序曲ヘ長調)、1902年の第6回作曲コンクールではCalogero Adolfo BraccoのPezzo Sinfonico"I Mandolini a Congresso"(マンドリンの群れ)やHyacinthe LavitranoのPiccola Sinfonia"Lola"(小序曲ローラ)など、ロマン派風の自由に昇華した形ではあるがソナタ形式の作品が受賞曲に現れている。またGiuseppe Anelliの"Risorgimento Italiano"(イタリアの復活)、"Risveglio Italico"(イタリアの目覚め)、"Sinfonia Drammatica"(劇的序曲)や、Isidoro Angelo Figlioliniの"La Leggenda del castello"(古城の物語)といった名曲が並ぶ。1932年にMonticoneが死去した後も娘のMariaによって発行が継続された。
松本譲氏がまとめたカタログがある。
当資料館にはササヤで入手したオリジナル譜が多数収蔵されている他、中野譜庫からの複写譜がある。
創刊号(石村隆行氏提供)
Il Plettro
Milano(1906~1943)
Alessandro Vizzariを主幹に、1906年から1918年の休刊を挟み第二次大戦中の1943年まで発刊された。戦後も1947年から1951年頃までEstudiantina Bergamascaより「Vizzariの名の元に」として復刊(但し記事のみ)された。創刊時より積極的に作曲コンクールを主催、創刊号で国際作曲コンクールが告示された。
このコンクール ではAmedeo AmadeiのInno Mandolinistico"Plectrum"マンドリン讃歌「プレクトラム」やArrigo CappellettiのInno Mandolinistico "Flora"マンドリン讃歌「フローラ」などが入賞している。
Il Plettroの作曲コンクールはイタリアのマンドリン音楽のために非常に大きい貢献をするもので、これ以降、第2回(1909)ではAmadeiの"Suite Marinaresca"「海の組曲」、Giuseppe ManenteのOuverture“Sulla piana della Melia”(序曲 メリアの平原にて)、第3回(1910)ではSalvatore Falboの"Suite Campestre"(田園組曲)、Ugo Bottacchiariのfantasia romantica"Il Voto"(詩的幻想曲 誓い)、Lodovico Mellana VogtのOuverture"Omaggio al Passato"(序曲 過去への尊敬)、第4回(1911)ではFalboの"Ouverture in Re min. (序曲ニ短調)やCappellettiの"Ouverture Dramatique"(劇的序曲)等の錚々たる曲を生み出し、現在の斯界の特に合奏におけるレパートリーの中心を成している。1928年には同志社大学マンドリンクラブが紹介されている。
イタリア留学中の故岡村光玉氏が、イタリア各地を渡り歩き同紙を収集、1977年にFrets誌その他を通じて斯界の愛好者に頒布した。当資料館には故岡村氏が収集出来た号をオザキ譜庫より頒布を請け収蔵している他、アメデオ・アマディの孫であるEmanuele Donati氏からの譲渡譜、故杉原里子氏遺贈譜により原本を200点程度収蔵しており、総数は800点以上となる。
Il Concerto
Bologna(1897~1934頃)
Alfredo Comellini社(Bologna)から出版されたマンドリン研究誌。月2回発行。主幹はS.Aldrovandi、P.Silvestri、C.Turco、U. Bottacchiariと変遷したが約40年にわたって刊行された。初期は作家の紹介、報道、討論などが掲載されたが、次第に楽譜のみになった。1923年頃までは作曲コンクールを度々開催し、斯界に大いに啓蒙した。
代表的な発表作品にはUgo BottacchiariのPreludio Sinfonico(交響的前奏曲)、Primo SilvestriのNotte Serena(静けき夜)、Amedeo AmadeiのGavotte-Serenade(セレナーデ風ガヴォッタ)、Pietro Mascagni/U.BottacchiariのSinfonia“Le Maschere”(仮面、序曲)などがある。1915年にはU.Bottacchiariの作品集成"Opera Completa di Collaborazione nel Giornale di Musica Il Concerto dal 1897 al 1914"が刊行されている。
当資料館には主にアメデオ・アマディの孫であるEmanuele Donati氏からの譲渡譜、故杉原里子氏遺贈譜による原本を100点程度収蔵している他、昭和年代に中野譜庫から複写された約100点を所蔵。
中野二郎氏作の発行年別出版目録があり、同目録から説明を引用した。
創刊号(石村隆行氏提供)
Vita Mandolinistica
Bologna(1901~1911)
1901年 F.lli Cocchi(コッキ兄弟)から出版された。主幹は当初はSarho Garganoで、すぐにFrancesco Tentarelliに代わり、1904年にはAlessandoro VizzariになったがVizzariがIl Plettro誌に専念してからは主幹不在の後、1907年Amedeo Amadei、1909年Vincenzo Billiと変遷している。1911年まで続き廃刊、Il Plettro誌に版権が移った。小品が中心でマズルカやポルカ、ワルツなどが主なレパートリー。主幹をつとめたTentarelliやIl Plettroでも活躍するRosario Garganoの初期作、Vizzariの作品などが収められている。作曲コンクールも数回行っており、R.Gargano,U.Bottacchiari,Ezio Redeghieriなどの作品が入賞している。Il Plettro誌同様故岡村光玉氏が、イタリア各地を廻って収集し、音楽愛好者に頒布した。
当館には故岡村氏が収集出来た号をオザキ譜庫より頒布を請け収蔵している他、アメデオ・アマディの孫であるEmanuele Donati氏より譲渡を受けた1905~1909年の原本を収蔵している。
中野二郎氏、中村泰彦氏作成の出版年月順目録がある。
Arte Mandolinistica
Genova(1905~1913頃)
Angelo Cigliaを主幹とし、1905年7月創刊。1908-1911の休刊を挟んで1913年まで発行された事が確認できている。創刊号にはコンクールの開催告知が掲載されており、そのコンクールのA部門の応募規定はマンドリン四重奏のための交響曲であり、そこでUgo Bottacchiariの"Alla citta di Genova"Sinfonia in 4 tempi(交響曲「ジェノヴァへ捧ぐ」)が第1位、Giuseppe Manenteの"Arte Mandolinistica"Sinfonia in 4 tempi(交響曲「マンドリン芸術」)が第2位を受賞した。このコンクールはCamillo Sivori音楽院の提唱により同院内に籍を置くリグリア教師協会 U.M.L(Unione Magistrale Ligure)が開催したが、同音楽院の院長はCigliaその人であり、彼は作曲家で音楽理論の著書もあるような人物であった。CigliaとU.M.L、Arte誌の関係についてはまだ不明な点が多いと考えられる。他にはLuigi Casazza/F.Poli編の"Sinfonia Originale"(独創的序曲)、Francesco Amorosoの"Amor patrio"(祖国愛)、"Idillo Campestre"(田園牧歌)、など音楽としての完成度の高い作品が並んでいる。廃刊後、G.Manente,F.Amoroso,A.Ciglia等、一部の作曲家の作品版権がパリのL’Estudiantinaへ譲渡されている。
石村隆行氏作成の出版年別目録がある。
当館にはごく少数だがオリジナル出版譜とPocciコレクションのカラー複写譜がある。
創刊号(石村隆行氏提供)
その他の定期刊行誌
Il Mandolinista Italiano
Milano (1915~1938)
A.Monzino&Garlandini刊行
Il Mandolinista
Torino (1900~1922)
E.Carosio主幹 G.Gori刊行
Il Mandolinista
1912年のみ
E.Carosio主幹のまま
A.Monzino e Figli(Milano)刊行
Il Mandolino Romano
Roma (1907~1911)
主幹Giuseppe Branzoli,
Alessandro Billi
L'Armonia
Bologna(1902~?)
主幹Primo Silvestri
A.Comellini刊行
Il Mandolinista Italiano
Milano (1895~1903)
Carisch&Janichen刊行
その他の出版譜
Raffaele Calace
自社ブランドで多数の自作品を出版
Casa Musicale 'Pucci'
現在も続くイタリアの老舗
Raffaello Maurri
フィレンツェで、兄のピラードと共に音楽出版とマンドリン、マンドラ、ギターの製造を行った老舗
Giovanni Ricordi
ミラノのヴァイオリン奏者のジョヴァンニが1808年に創立。スカラ座の全楽譜を買い取った事で有名。現在はユニヴァーサルミュージックの傘下。
Adolfo Lapini
Carlo Munierの作品を出版しているが、Giuseppe Manente、Oreste Carlini、Vittorio&Giuseppe Fillipa、らの吹奏楽譜を出版している事でも知られる。
お知らせ
①・Raffaele Calaceの楽譜はF.M.I(Federazione Mandolinistica Italiana/イタリアマンドリン協会)のサイトでダウンロードする事ができます。
②・Carlo Munierの楽譜はオザキ譜様を始めとする有志の方のご尽力でI.M.S.L.P(Carlo Munier)のページでダウンロードする事ができます。
資料館に収蔵されている作品の出版社
A.Comellini, Bologna
Cocci, Bologna
C.Notari, Cesare
A.Forlivesi, Firenze
A.Lapini, Firenze
C.Bratti, Firenze
G.Venturini, Firenze
R.Maurri, Firenze
A.Vizzari, Milano
Carisch, Milano
Casa Musicale Pucci, Napoli
Ernest Rocco, Napoli
G.Silvestri, Napoli
Raffaele Calace, Napoli
Zanibon, Padova
G.Manente, Roma
C.Beltramo, San Remo
E.Carosio, Torino
F.lli Amprimo, Torino
G.Gori, Torino
C.Schmidl, Trieste
本ページの解説文は当資料館作成の解説文を石村隆行氏に校訂監修していただきました